はじめに

私は2026年9月から、モリイシガメ(Glyptemys insculpta)のファーム作りを本格的に始めることにしました。

最終的な目標は、繁殖メス30匹、オス最大10匹程度を中心としたモリイシガメ専門の繁殖施設です。

さらに、単なる繁殖施設ではなく、AI・IoT・ロボティクスを組み合わせ、将来的には飼育管理の自動化まで検証できる実証フィールドにしたいと考えています。

こう書くと、

「最近思いついた計画なのでは?」

「モリイシガメが儲かりそうだから始めたのでは?」

と思われるかもしれません。

しかし、この計画は2026年になって急に思いついたものではありません。

始まりは2019年です。(モリイシガメの飼育は2018年11月とんぶりで2匹入手したことに始まる)

そこから少しずつモリイシガメを集め、将来の構想を考え、自分自身の生活環境も変えながら、7年かけてようやく実際にファームを作り始める段階まで来ました。

まずは、その経緯から書いておきます。

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この記事全体をまとめた図解

2019年|東京のマンションでモリイシガメの飼育を開始

2019年、私はモリイシガメのベビーを飼育し始めました。(実際は2018年11月にベビーを2匹入手)

当時は東京のマンション暮らしです。

今のように広い土地があるわけでもなく、当然ながらファームを作れるような環境でもありませんでした。

それでも実際に飼育してみると、このカメがどんどん好きになりました。

ゴツゴツとした甲羅。

太く力強い手足。

オレンジ色が入る体。

そして、どこか怪獣のようにも見える独特の姿。

私はいろいろなカメを飼育してきましたが、その中でもモリイシガメは特に好きな種類です。

飼育を続けているうちに、

「いつか田舎の広い土地で、モリイシガメをたくさん飼育してみたい」

と思うようになりました。

最初から事業として考えていたわけではありません。

もっと単純に、

「自分の好きなカメを、土地のある場所で思い切り飼育できたら最高だな」

という夢でした。

モリイシガメ(Glyptemys insculpta) モリイシガメ(Glyptemys insculpta)

2018年11月にベビーを入手。東京のマンションでモリイシガメの飼育を始めた頃。

2021年|モリイシガメファーム構想の草案を作る

モリイシガメの飼育を始めて約2年。

2021年頃には、単に「たくさん飼いたい」という夢から一歩進んで、

「いつかモリイシガメのファームを作りたい」

という構想を具体的に考えるようになりました。

当時はまだ東京に住んでいます。

土地もありません。

設備もありません。

いつ実現できるのかも分かりません。

それでも、

田舎へ移住し、土地を使ってモリイシガメを長期的に飼育・繁殖する。

そんな将来像を、自分なりに草案として残していました。

この頃の私は40代半ばでした。

年齢を重ねるにつれて、

「これから何を始めるか」

だけではなく、

「自分はこの先、何をずっと続けていきたいのか」

を考えるようになっていました。

私の中では、モリイシガメは一時的な趣味ではなく、

人生の後半まで続けられる「終の趣味」の一つ

になり始めていました。

60歳になっても、70歳になっても、

「今年は繁殖するかな」

「この個体は大きくなったな」

「この子の子どもが、今度は親になったな」

と楽しめる。

そんな趣味なら最高だと思ったのです。

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2021年に作っていたファーム構想。当時はまだ東京暮らしで、実現する土地すらなかった。

この2021年の記録は、自分にとってかなり大きな意味があります。

なぜなら、2026年になってから後付けで「昔から考えていた」と言っているわけではなく、

実際に2021年の時点で、モリイシガメファームを作りたいと考えていた記録が残っているからです。

2023年5月|愛媛県南予地域の山間部へ移住

そして2023年5月半ば。

私は東京を離れ、愛媛県南予地域の山間部へ移住しました。

もちろん、移住した理由はモリイシガメだけではありません。

田舎暮らしへの興味。

仕事。

地方でやりたいこと。

生き物を飼育できる環境。

いろいろな理由が重なっています。

ただ、その中には間違いなく、

「土地のある場所で、生き物を思い切り飼育したい」

という思いもありました。

東京に住んでいた頃は、

「土地がないからできない」

でした。

それが地方へ移住したことで、

「どんなファームを作るか考えられる」

に変わりました。

この違いはとても大きいです。

土地があることで、初めて、

  • 屋外飼育設備
  • 繁殖設備
  • 亜成体育成場
  • ベビー育成施設
  • 将来の増設

といったことを、現実的な設備として考えられるようになりました。

田舎に移住

2023年5月。東京から愛媛県南予地域の山間部(田舎)へ移住。ファーム構想を実現できる環境へ。 2023年5月。うちの周りはこんな感じでのどか

2026年9月|種親候補のメス5匹が揃い、ファーム作りをスタート

そして2026年。

現在、私はモリイシガメを15匹飼育しています。

ただ、15匹になったからファームを始めることにしたわけではありません。

自分の中で、以前から一つ決めていた条件がありました。

それが、

「種親候補となるメスが5匹揃ったら、本格的にファーム作りを始める」

というものです。

2026年9月。

その条件が整いました。

そこで、

「そろそろ構想ではなく、実際に設備を作る段階に入ろう」

と決めました。

2019年に最初のモリイシガメを飼育し始めてから7年。

2021年にファーム構想の草案を作り、

2023年に地方へ移住し、

2026年に種親候補のメス5匹が揃った。

ここから、本格的なモリイシガメファーム作りをスタートします。

モリイシガメ

2026年9月。種親候補となるメス5匹が揃い、ファーム構築を本格始動。(画像はうちの種親オス2018CB)

振り返ると、実際に始めるまで7年かかった

時系列だけを並べると、とてもシンプルです。

2019年
東京のマンションでモリイシガメ飼育開始

↓

2021年
モリイシガメファーム構想の草案を作成

↓

2023年5月
愛媛県南予地域の山間部へ移住

↓

2026年9月
モリイシガメ15匹
種親候補メス5匹が揃う

↓

ファーム構築スタート

こうして振り返ると、

「ファームを作りたいと思ってから、実際に始めるまで7年かかった」

ことになります。

しかし、私はこの7年間を遠回りだったとは思っていません。

むしろモリイシガメのように長い時間をかけて育つ生き物だからこそ、

自分自身も時間をかけながら、個体と環境の両方を育ててきた

という感覚です。

なぜ、そこまでモリイシガメなのか

ここまで読めば、

「昔から好きなのは分かった。でも、なぜファームとしてモリイシガメなのか?」

と思う方もいるかもしれません。

一番大きな理由は、やはり単純です。

一番好きなカメだからです。

そして、もう一つあります。

私はいつか、

「モリイシガメといえば、たなさん」

「モリイシガメのブリーダーといえば、たなさん」

と言われるような人になりたいと思っています。

これは、商売人として有名になりたいという意味ではありません。

私にとっては、

趣味人として最大級の賛辞

です。

長年その動物を飼い続けている。

繁殖している。

失敗も経験している。

生態や飼育について調べ続けている。

自分なりの設備を作る。

記録を残す。

次の世代へつなげる。

そういう積み重ねがあって初めて、

「あの人は本当にモリイシガメが好きなんだな」

「モリイシガメなら、あの人だよね」

と言ってもらえるのだと思います。

私は、その言葉をもらえるくらいまで、このカメと長く付き合いたい。

むしろ、いつかそう言ってもらえること自体が、私にとって一つの目標です。

その意味でも、ファームを作ることは単に頭数を増やすためではありません。

モリイシガメを飼い、繁殖し、記録し、研究し続ける自分自身の集大成を作ること

でもあります。

長期間にわたって繁殖を続けるのであれば、私はここが非常に大切だと思っています。

流行っているから。

価格が高いから。

儲かりそうだから。

それだけでは、10年、20年という単位で続けるのは難しいと思います。

自分が本当に好きな動物だからこそ、

成長を待つ時間も、

繁殖しない年も、

設備を作る手間も、

長く付き合える。

私にとって、その対象がモリイシガメでした。

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モリイシガメは「時間そのもの」が参入障壁になる

モリイシガメを長期的な繁殖対象として見たとき、もう一つ面白い特徴があります。

それが、

時間をかけて種親を増やすこと自体が、ファームの強みになる可能性がある

という点です。

モリイシガメでは、孵卵温度を操作して「メスを多く作る」という繁殖方法は使えません。

カメの仲間には、卵を孵化させる温度によって性別が変化するTSD(温度依存性決定)を持つ種類があります。

しかしモリイシガメでは、性別は遺伝的に決まります。

つまり、

「今年はメスが欲しいから、メスになる温度で孵化させよう」

ということができません。

ベビーを育て、その中からメスが出てくるのを待つ必要があります。

私の感覚で言えば、

「性別ガチャ」

です。

さらにモリイシガメは、成熟まで長い時間を必要とする種類です。

ベビーを入手して、翌年からすぐに繁殖できるような生き物ではありません。

ここで重要になるのが、

お金では短縮できない時間

です。

飼育容器なら、お金を出せば購入できます。

カメラもセンサーも買えます。

土地も、条件次第では購入できます。

しかし、

長期間育てた繁殖可能なメス

だけは、注文した翌日に大量に完成するものではありません。

多産ではないからこそ、種親数が生産能力になる

モリイシガメは、一匹のメスから年間何十匹、何百匹という子どもを生産するタイプの動物ではありません。

だからこそ私は、

繁殖可能なメスを多数保有すること自体が、将来の生産能力になる

と考えています。

例えば、

繁殖メス2匹のブリーダーと、

繁殖メス30匹のファーム。

同じモリイシガメを扱っていても、年間の潜在的な生産能力には大きな差が生まれます。

しかも、その30匹を後から短期間で揃えるのは簡単ではありません。

メスだけ狙って作れない。

成熟にも時間がかかる。

そう考えると、繁殖メスは単なる「在庫」ではなく、

長い時間をかけて作る生産設備

とも考えられます。

私が作りたいのは「高いカメ」ではなく「繁殖基盤」

爬虫類の繁殖では、希少な種類や高額な個体を所有することが競争力になる場合があります。

もちろん、それも一つの方法です。

ただ、私が作りたいものは少し違います。

高額な個体であっても、市場に出れば他の人が同じものを購入できる可能性があります。

一方で、

何年もかけて育てた多数の繁殖個体

複数の血統

繁殖記録

飼育ノウハウ

設備

長期間蓄積したデータ

まで含めたファームは、同じものを翌年にそのままコピーすることはできません。

私が作りたいのはこちらです。

「高いカメを売る」のではなく、後から簡単には作れない繁殖基盤を先に作る。

これが、モリイシガメファーム構想の根幹です。

生まれたベビーを全部売るつもりもない

将来、ファームで繁殖に成功したとしても、生まれた個体をすべて販売するつもりはありません。

一部は販売する。

一部は残す。

そして成長させ、将来メスだと判明した個体は、次世代の種親候補として育てていく。

私の中では、

販売するベビーは現在の収益。

残す個体は未来の生産能力。

という考え方です。

短期的な売上だけを考えれば、販売できる個体をすべて売った方が良い場合もあります。

しかし、それだけではファームの繁殖能力はなかなか大きくなりません。

私は、

繁殖する

↓

育てる

↓

選抜する

↓

次の種親として残す

という循環を何年も回していきたいと考えています。

一つの目標が「繁殖メス30匹」

そこで現在設定している一つの目標が、

繁殖メス30匹

です。

オスについては血統や繁殖計画を考えながら選抜し、最大10匹程度を維持する構想です。

もちろん、30匹という数字に絶対的な意味があるわけではありません。

ただ、

数ペアを飼育して繁殖する段階

から、

モリイシガメを専門的・継続的に繁殖するファーム

へ移行するための、一つの目標として設定しています。

2026年現在は15匹。

種親候補メスは5匹。

ここから先も、一気に完成させるつもりはありません。

時間をかけながら、自分で繁殖した次世代も残し、少しずつ種親群を作っていく予定です。

「メス30匹いれば儲かる」という話ではない

ここは誤解されたくない部分です。

この構想は、

「モリイシガメのメスを30匹持てば将来儲かる」

という単純な投機ではありません。

どれだけ供給しにくい動物でも、需要がなければビジネスにはなりません。

将来の人気。

国内需要。

販売価格。

競合するブリーダー。

海外からの供給。

法規制。

市場環境を左右する要素はいくらでもあります。

したがって、

30匹の繁殖メスを保有すれば成功が保証されるわけではありません。

私が目指しているのは、

需要が存在したときに、後発が短期間では再現しにくい繁殖基盤を持っておくこと

です。

そして、仮に市場環境が想定通りにならなかったとしても、

私はそもそもモリイシガメそのものが好きで飼育しています。

この点は、趣味と事業を組み合わせる上で非常に重要だと考えています。

2026年、ファーム構想にAI・IoTという要素が加わった

2019年にモリイシガメを飼育し始めた頃には、現在の構想にはなかった要素があります。

それが、

AI・IoT・自動化

です。

現在、私は「たなリテックラボ」で、AIやシステム、自動化などにも取り組んでいます。

そこで考えました。

せっかくゼロからファームを作るのであれば、

普通の繁殖施設を作るだけではなく、自分が今取り組んでいる技術も組み合わせてみたい。

モリイシガメの飼育設備に、

  • 環境センサー
  • PoEカメラ
  • AI画像認識
  • 水位監視
  • 自動給水
  • 環境データ収集
  • 異常検知
  • 飼育記録の自動化

などを段階的に導入する。

さらに将来的には、AIによる設備制御まで検証していきたいと考えています。

つまり、

モリイシガメの繁殖施設そのものを、AI・IoT・ロボティクスの実証フィールドにする

という構想です。

2019年の趣味と、2026年の仕事がつながった

振り返ってみると、私自身はここが一番面白いと思っています。

2019年。

東京のマンションで、好きなモリイシガメを飼い始めました。

2021年。

いつかファームを作りたいと構想しました。

2023年。

東京を離れ、愛媛県南予地域へ移住しました。

2026年。

種親候補メスが5匹になり、ファーム構築を始める条件が整いました。

そして同じ頃、私自身はAIやIoT、自動化を仕事として扱うようになっていました。

結果として、

昔から続けてきた生き物の趣味

と、

現在取り組んでいるテクノロジー

が一つにつながりました。

たなブリードラボ × たなリテックラボ(両方ともたなの事業=会社)

モリイシガメの繁殖。

AI。

IoT。

自動化。

データ収集。

これらを同じ場所で実践していきます。

だから私にとって、このファームは急に思いついた新規事業ではありません。

2019年から続いている夢に、今の自分が持っている土地・経験・技術を少しずつ足していった結果です。

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最終的に作りたいもの

最終的に目指しているのは、

モリイシガメを長期的に繁殖する専門ファーム

×

AI・IoT・ロボティクスによる次世代飼育技術の実証フィールド

です。

好きなモリイシガメを何十年も飼育・繁殖する。

時間をかけて種親群を作る。

自分のファームで生まれた次世代を育て、その中からさらに次の種親を残す。

そして、その飼育環境そのものを使ってAIやIoT、自動化技術を開発・検証する。

私にとっては、

趣味

繁殖

事業

研究

テクノロジー

が全部つながった計画です。

2019年、東京のマンションでモリイシガメを飼い始めたところから始まりました。

2026年9月。

ようやく、構想を実際の設備へ変えていく段階に入ります。

そしていつか、

「モリイシガメといえば、たなさん」

「モリイシガメのブリーダーといえば、たなさん」

と言ってもらえるところまで、このカメと付き合っていきたいと思っています。

それは私にとって、趣味人として最高の賛辞です。

ここからどこまで大きくなるのか。

実際に設備を作り、飼育し、失敗したところは修正しながら、その過程も記録していこうと思います。

次回|第2章「どんなモリイシガメファームを作るのか」

次回は、

「では、実際にどのようなモリイシガメファームを作るのか?」

についてまとめます。

繁殖メス30匹、オス最大10匹。

ベビー育成温室。

屋外亜成体育成場。

成体の個別飼育設備。

繁殖専用設備。

そしてAI・IoTによる監視と自動化。

これらをどのようにつなげ、一つのファームとして構築していくのか。

モリイシガメファーム全体の構想図を紹介します。

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